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「ゴヤ展-光と影-」を見た。 [鑑賞]

上野の国立西洋美術館で開催中の「ゴヤ展」を見てきました。
40年ぶりの来日という「着衣のマハ」が目玉だと思いますが、
ほかにも、タピスリー用原画や、肖像画、版画、素描と
ゴヤのさまざまな側面がわかるようになっています。

作品点数が多かったのは版画ですが、
なかでも闘牛を描いた作品群は、
副題の「光と影」にふさわしいと思いました。
モノクロの版画で、闘牛の一瞬の動きを描写したものです。

また、「戦争の惨禍」という版画集はその名のとおり、とても悲惨な場面を描いたものですが、
それにしてもリアルです。
ほんとうに死体をその目で見たんだろうなと思わせるものです。
このような悲惨な場面を目にして、諷刺画が描かれたのだと思いますが、
諷刺画というのはその時代を生きた人でないと、本当には理解できないのではないかと思います。
タイトルを読んで絵を見ても、よく分からないなあ~?となりがちです。

実は、1年前に「ゴヤ」(堀田善衛・著、集英社)を読みました。
全4巻と大作で、半年くらいかけて読みました。
面白かったですね~。
それでゴヤ展をやると聞いて、楽しみにしてました。
著者がそうとうゴヤに入れ込んでいるというのが文章の端々から感じられて、
ちょっちゅう「われわれの主人公」という表現が出てきます。(笑)

病気で耳が聞こえなくなり、その後大病しても82歳まで生きるという、頑丈な体を持ち、
絵の師匠や兄弟子としょっちゅう喧嘩をし、泥臭く宮廷画家を目指した…。
たくましくて、したたかなイメージです。

スペインはそのころ、王政から、ナポレオン軍(フランス)の侵略によって、戦争へと突入します。
ナポレオンの弟が王座に就き、それに市民軍が徹底抗戦し、追い出した後、亡命していたスペイン国王が帰還し、ナポレオンの協力者や文化人を弾圧します。
スペインの近代化のためには王政ではだめだと思っている政治家や文化人は大勢いて、
そのような人々は、ナポレオンに協力したのですが、その結果、処刑されたり、国外へ逃れたりしました。
ゴヤの友人やパトロンにもそのような人たちが多く、
ゴヤ自身も、「着衣のマハ」「裸のマハ」で異端審問所に呼び出されたりしています。
でも結局、うまく立ち回って、後半生はフランスのボルドーに半亡命のような形で暮らします。

79歳でボルドーに半亡命したあとは、新しい技法を試したりしています。
「おれはまだ学ぶぞ!」
ゴヤが友人に宛てた手紙にある言葉です。
ゴヤは、猛烈に働いた人だそうです。
隠居などは頭になく、死ぬまで働くつもりだったのでしょう。

堀田氏のゴヤは、このようにとても情熱的でパワフルな人物ですが、
今回の展覧会に出品されていた「自画像」はイメージどおりです。
(髪の毛ぼさぼさで、襟元がはだけている自画像です)
知り合いに会ったような気がしました。(笑)

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コメント 4

テリー

ゴヤ展を、今やっているのですね。ゴヤは、見たい画家の一人です。
by テリー (2011-11-13 15:21) 

deko

テリーさま。
来年の1月29日までやってます。
まあまあ混んでましたが、
版画などの小さいサイズの作品が多いわりには、見れた方です。

by deko (2011-11-13 23:20) 

nyonyo

自画像、イメージ通りですか~笑。本大作ですね~、全四巻ですか、、、本屋さんで見てこようと思います~^^。
by nyonyo (2011-11-16 01:46) 

deko

nyonyoさま。
あの自画像を「イメージどおり!」と言われたら、
ゴヤさんは不機嫌になるんでしょうか。(笑)
4巻も本を読むと、ほんとに知り合いのような気になります。
by deko (2011-11-16 23:42) 

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