乳がんのこと ７ 仕事

最初、乳がんですと言われたとき、「あー、これで次回の契約更新はないな」と思いました。
今の会社は、１年契約の契約社員という身分です。しかも、入社してから１年も経っていなかったのです。わたしがもし経営者だったら、更新しないだろうと思いました。
だから、クビになっても仕方ないやと半分開き直って、治療を最優先させてもらいました。
でも、契約は当たり前のように更新され、治療中はなるべく残業のないように仕事量も考慮してくれました。
会社ってシビアなものだと思っていたので、信じられないような気持ちで、たいへんありがたかったです。

仕事をしていてよかったとつくづく思います。
どんなに頭が真っ白な状態でも、仕事中はいままで通り平穏な気持ちでいられたからです。
自分が非常事態でも、周囲がいつもどおりだと、とても安心するのですね。

仕事はDTPオペレータです。印刷物の版下データを作成する仕事です。
書籍などのページ物から、ポスター・チラシまで、なんでもやります。
一日中パソコン作業なのですが、副作用で指先が痛かったときは、結構大変でした。
指サックをしてみたり、つらかった人差し指をなるべく使わないようにしてみたり。
幸いなことに文字入力の作業は少なくて、だいたいマウスで作業してたので、なんとかだましだまし痛い時期を乗り越えました。
仕事はずっとデスクワークで、お客さんと会うこともないので、多少体調が悪い時でも、なんとかやっていけました。でもこれが、外回りの仕事とかだったら、大変だろうなと思いました。

ちょうど手術の前、マシンの更新が決まりました。
いままでは、MAC OS9でQx4/イラレ8だったんですが、MAC OSXでQx8/CS5になりました。
一気にバージョンアップです。
全員分の台数がなかったので、わたしは手術もあるし、今回は見送りかなと半分諦めていたのですが･･･最新マシンいただきました！（笑）
仕事内容で決められたことだと思いますが、自分にはご褒美のように感じました。
退院したら最新マシンが待っている～！と大変うれしかったです。

すっかり別物となったイラレCS5や、表組みまでできるようになっていたQuarkXPress8、メニュー項目増えすぎだよ（笑）のインデザCS5と日々楽しく格闘しています。

これが最大の、１年前には想像できなかったことなのです。

コメント 2

はじめまして。
１〜７まで拝読しました。
男の私からはイメージとしてしか捉えられていないのですが、
淡々と書かれている文章から、その詳細の一端を垣間見ることが出来ました。
（もちろん周りには何人か乳がん経験者はいますが、
　どうしても興味関心が湧きそうなエピソードにお話がいってしまい、
　なかなかクールに理解しづらいのですね）

仕事先の環境、これは幸いでしたね、
厳しい時代環境の中で、暖かみを感じる会社の存在、うれしいですね。
DTPの仕事をされているとのこと、
昔のアナログ時代に比べると効率は良くなった反面、
使う神経もどんどん増えていますね。
でも、楽しみながら取り組める仕事があるのがいちばんです、
これからも良い仕事をなさってください。

健康診断から始まった一年、
たぶんそれまでの人生観、世界観が変わってしまうような
とても大きな出来事だったと思いますが、
ともかくも、これからのご活躍を祈念しています。
by e-g-g (2011-09-05 12:51) 

e-g-gさま

あたたかいコメントありがとうございます。
仕事のことは、ほんとうにラッキーだったなあと思います。
契約が打ち切られなかったこともそうですが、
副作用などで仕事が続けられなくなるということもなかったですし、
同僚や上司が今までと同じように接してくれたこともありがたかったです。

１年前までは、漠然と平均寿命まで生きるものだと思っていたのですが、
そうとは限らないということがよくわかりました。
そのへんが大きな人生観の変化です。
あと、人間、どんな状況にも慣れるものだということ、
傷は意外と早く治るというのも、小さな人生観の変化です。（笑）
by deko (2011-09-05 23:20)